株式投資

『没落』レバナス、グロース株が死屍累々な件【2022年2月】

ハイパーグロース株、レバナスが急落している件について解説していきます。

今回は、2020年から2022年にかけてのハイパーグロース株、レバナス(ナスダック100の2倍レバレッジ投資信託)のパフォーマンスを振り返っていきます。

正直言って、グロース株崇拝者にとってはあまり良い内容ではありません。いち若者である筆者にとってもグロース株がやられているのはあまり心地の良いものではありません。

しかし、今後の投資の参考としてこの記事を残しておくことにしました。

2020年はグロース株の年

2020年はとにかくグロース株が指数をアウトパフォームする年でした。

振り返ってみると”ARKK(アーク・イノベーション・ETF)””第二のテスラ株”といった言葉がネットの話題になることが多かったです。日本では”ARKK”が買えなかったため、代わりに”レバナス”という言葉が流行っていました。

※レバナスはナスダック100指数に2倍レバレッジをかけた投資信託のことです。

ARKKの日足チャートです。

ARKKの日足チャートです。

 

レバナスの代わりにTQQQ(ナスダック3倍レバレッジ)の日足チャートです。

レバナスの代わりにTQQQ(ナスダック3倍レバレッジ)の日足チャートです。

2020年はコロナショックの影響で3月に暴落した後、底をつけて大反発をしました。

FRBが”雇用の救済処置”として量的金融緩和政策を打ち出したため、米国債の金利は0.5%近くまで低下しました。

米国債10年利回りのチャートです。

米国債10年利回りのチャートです。

また、コロナ禍の影響で”リモートワーク”が当たり前となりました。よって、ビデオ通話を提供するズームや、ネットセキュリティ会社のクラウド・ストライクなどのネット企業が大きな注目を受けました。

加えて、家に引きこもるようになった影響で、ネットでの娯楽に注目が集まりました。金を持て余した若者にとって、一瞬にして儲かる”仮想通貨”や”ハイパーグロース株”は魅力的な娯楽として楽しまれるようになりました。貧困層にとっても同じで、人生逆転の切符に見えたのでしょう。

 

こうした背景がグロース株、特にハイパーグロース株にとって素晴らしい温床となり、投機よりの投資熱が非常に増えました。

実際、2020年のS&P500、ARKK、レバナス(今回は3倍レバレッジのTQQQで代用)を比較してみると、その差は歴然です。イカれたパフォーマンスです。

S&P500、ARKK、TQQQの比較チャートです。

S&P500、ARKK、TQQQの比較チャートです。

そのため、2020年~2021年にはレバナス民と呼ばれる”レバナスに積立投資する投資家”がTwitterで急激に増えたように思えます。

実際に比較できる純資産、投資人数といったデータが見つからなかったため、筆者の感想となってしまいますが...。

しかし、SNS(特にTwitter)を見ると”レバナス民””ガチホ勢”とプロフィールに書いている人が多く見受けれましたし、YouTubeでもレバナスを紹介したり、実際に積立投資している人がパフォーマンスを公開している動画が急激に増えました。

こうした投機熱がいつまでも続くようでしたが、2021年からは陰りが見え始めました。

2021年は代表指数の年

2021年はとにかく代表指数が強かった年でした。個別株をいじくるよりも代表指数(S&P500、全米)に投資したほうが良いパフォーマンスとなりました。

2021年のS&P500、ARKK、TQQQの比較チャートです。

2021年のS&P500、ARKK、TQQQの比較チャートです。

2020年には暴騰していたARKKやレバナスのパフォーマンスにも陰りが見え始めました。

ハイパーグロース株で構成されているARKKはS&P500よりもアンダーパフォーマンスしている結果となっています。レバナスはアウトパフォームしているものの、2020年と比べてパフォーマンスの差が減っています。(それでも抜きんでた強さですが...)

個別のハイパーグロース株は?

ハイパーグロース株の個別株を見ていくと、

ビデオ通話で注目を集めたズームは、2020年に高値をつけてからズルズルと下げていっています。また、決算も徐々に成長性を失っていく結果となりました。

ズームの日足チャートです。

ズームの日足チャートです。

クラウドの管理システムを提供しているオクタはずっと横ばいが続いています。ロング&ショートを上手くやればプラスのパフォーマンスとなるでしょうが、そんな博打をするなら素直に指数へ投資したほうが良いでしょう。

オクタの日足チャートです。

オクタの日足チャートです。

ゲーム開発をするうえで必要なエンジンを提供しているユニティは、前者2銘柄とは違いカップを形成しています。そのため、底値でうまく買えればパフォーマンスが良かったことでしょう。しかし、他のハイパーグロース株が下落している中、鼻をつまんで買わなければいけないため、非常に危険な投資方法ではあります。ただ、ハイパーグロース株全てがダメだったわけではなく、決算が良くてチャートも良かった銘柄もあったとして紹介させていただきました。

ユニティの日足チャートです。

ユニティの日足チャートです。

2020年には非常に過熱していたハイパーグロース株が微妙な年となりました。

レバナスはまだナスダック指数に連動していることもあって、大型グロース株(アップルやグーグルなどのGAFAM)が大きく占めています。よって、大きな痛手にはなりませんでした。しかし、すでにチャートでお分かりのように、2022年にはレバナスも大きくやられてしまっています。

2022年はグロース株にとって地獄!?

2022年はまだ2月ですが、大型、小型、ハイパーグロース関係なく、グロース株にとって地獄のような出だしとなってしまいました。

2022年のS&P500、ARKK、TQQQの比較チャートです。

2022年のS&P500、ARKK、TQQQの比較チャートです。

米国株は年初来から弱気な相場が続いていましたが、それでもS&P500は-6.9%程度にとどまっています。

ARKKは-28%、TQQQは-37%(レバナスは-20%~25%)とまだ2ヶ月しか経っていないのに酷いパフォーマンスとなっています。

 

こうなった要因として、

 

  • 米国のFRBによる金利引き締め(利上げ)の本格化

  • 株価の過熱しすぎ

 

の2つが絡んできます。

前者の金利引き締めでは、元々2021年前半の金利引き締め予想では”2022年に利上げが1回”という予想でした。しかし、2021年後半になっていくにつれ、インフレ問題が深刻化していき、ついには"量的金融緩和の終了時期を従来予定の2022年6月よりも前倒し、さらには量的引き締めまで検討した"FRBのタカ派転身により、急激に米国10年債利回りが上昇しました。そのため、2021年後半から2022年にかけてグロース株は手酷くやられました。

 

次に後者の株価の過熱感はグロース株、特にハイパーグロース株が将来の利益を折り込んだ株価にまで上昇してしまったためです。要するに、株価が現在の価値ではなく、将来の成長を込みにした価値で評価されてしまったということです。グロース株なんだから成長性を織り込むのは当たり前では?」という見方もあります。というか、それが正しいです。しかしながら、今回の大相場では株価が異常なまでに過熱してしまいました。

 

例えばリモートワークで注目を集めたズーム・ビデオは、世界中の企業がリモートワーク化する流れで大きく利益を伸ばしました。しかし、いざ2021年にコロナショックが落ち着きを見せると、「リモートワークをや~めた!」と多くの企業が徐々にリモートから従来の形へ戻ろうとします。すると、これまで大きな注目を集めていたはずのズームへの投機熱が急に冷めてしまいます。

また、ズームのようなサブスクリプション制のビジネスモデルだとある時点で成長が鈍化していきます。なぜなら新規の買い手が減っていくからです。そのため、2020年はリモートワーク化の拡大により急激に新規の顧客を獲得したズームですが、2021年からは逆に新規顧客の獲得が減少していきました。

 

これはSNS企業でも同様で、メタ・プラットフォームズ(旧:フェイスブック)は2022年第1四半期決算の発表で、フェイスブックのアクティブユーザーがアナリスト予想を大きく下回りました。

米メタの第1四半期見通し、売上高が予想下回る 株価20%安(引用:ロイター)

こうした成長の鈍化が他のグロース株にも重しとなってくるでしょう。

グロース株の今後

ただ、グロース株の全てがダメだと言っているわけではなく、レバナスを否定するつもりもありません。

 

グロース株の中にも2022年第1四半期決算が良かった銘柄も多かったです。金融引き締めの地合いの悪さに目を瞑れば、今すぐにでも投資したいというのも事実です。

しかし、これから金利引き締めが段階的に行なわれ、米国債の金利が上昇していけば、グロース株にとって辛い局面となります。

逆に言えば、ここを乗り越えたグロース株はいわゆる”テンバガー”となるため、こうした銘柄には積極的に投資していきたいです。そのため、今は地合いの悪さで我慢を強いられますが、いずれは投資するため、常に注目していく必要があります。

 

レバナスに関しても、ひょっとしたら2022年はさらに値を下げていき、積立投資をしている人にとっては、心が張り裂けそうになるかもしれません。しかし、20年後、30年後を見据えて投資しているため、その日のパフォーマンスを気にするのは杞憂でしょう。

筆者はレバナスに積立投資をするつもりはありませんが、短期的にTECL(テクノロジー株への3倍レバレッジETF)へ投資することはあります。そのため、あまり非難する気にはなりません。

将来のことは予想がつかないため、レバナスが今度どのようになるかは分かりません。ひょっとしたら3年後くらいにはすでにS&P500や全米株式を大きくアウトパフォームしているかもしれません。

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